MBA留学の目的の一つにキャリアチェンジが挙げられます。しかしながら、1年制だと専門分野を選択できず、長期休暇でインターンをすることもできません。それでも、1年制アメリカMBA留学後にキャリアチェンジ可能なのか考察してみます。
1年制アメリカMBA留学でもキャリアチェンジは可能
結論から言いますと、1年制アメリカ留学でもキャリアチェンジは可能です。ただし、アメリカMBA留学経験だけでは難しく、「アメリカMBA留学前の経験にプラスして」といった条件が付くと考えます。
そもそも、転職活動ではポテンシャルというよりも、即戦力、実務経験が求められます。そのため、アメリカMBA留学でいくら体系的に学んだとしても、日本ではなかなか評価されづらいのが実情です。
僕は元々営業をずっとやっていました。MBAから帰国し、せっかくだからと思って、いろんなポジションを受けました。その中で、財務やFP&Aといったポジションの選考を受けた際は、MBAくらいしかアピールする経験がありませんでした。頑張ってMBA留学での経験をアピールしたものの、あまり相手に刺さっていなかった印象でした。
2年制のMBAであれば、ビジネスの中でも専門分野を選択して重点的に学べ、また、長期休暇中にインターン等で実務を積み、アピール材料が得られたと考えます。
こういったことから、1年制MBA留学でキャリアチェンジを行いたい人は、前職での経験+MBAの経験の両方をアピールして、キャリアチェンジを進めていくことが必要です。
製造業の営業職から金融業界のアドバイザーへ
ここからは、僕のケースを書いていきたいと思います。僕は実際に1年制アメリカMBA留学後にキャリアチェンジをしました。今まで8年半、製造業(その中でも、機械系)の営業職しか経験していなかったのですが、金融業界のアドバイザー、具体的に、M&Aのアドバイザーへキャリアチェンジしました。
なぜ営業からM&Aアドバイザーへキャリアチェンジができたか振り返ると、アメリカMBA留学前の経験とアメリカMBA留学での経験が非常によいシナジーを生んだからだと思います。
ここで、M&Aアドバイザーへのキャリアチェンジにあたって、評価された経験、スキルをアメリカMBA留学前のものと、アメリカMBA留学でのものに分けて分析してきます。
アメリカMBA留学前の経験、スキル
まずは、僕のアメリカMBA留学前の経験、スキルでM&Aアドバイザーとして評価されたものを挙げます。
法人営業経験
僕は8年半にわたって、法人営業を3社で経験しました。その中でも多様な経験をしており、大企業でチームで動く経験もあれば、中小企業で個人で動く経験もあります。顧客も、日系顧客も外資系顧客も経験し、顧客の会社規模も大企業から中小企業と経験しております。
M&Aのアドバイザーの大きな仕事の一つに、買い手企業探しが挙げられます。ただ、シナジーがありそうな企業を探すだけでなく、売り手企業を最大限アピールし、相手に意思決定を促さなければなりません。このプロセスにおいては自体、営業とやっていることは変わりません。この売る商品が会社になったくらいです。
こういった点からM&A法人営業経験が面接で一番評価されたと思いますし、入社してからも非常に役にも立ちました。
会計の知識
僕の会計の知識は約10年前の簿記2級合格とUSCPA試験に合格です。実務経験はありません。しかも、過去に勉強したことなので、ほとんど忘れています。
もちろん、M&Aアドバイザーとして、会計の知識は必要なので、面接では最大限アピールしましたし、入社後は少しずつ昔勉強したことを復習したり、努力はしました。
そもそも、M&Aアドバイザーとして要求される会計の知識レベルはそこまで高くありません。実際にエグゼキューションフェーズでは、会計の専門家によるデューデリジェンスが行われます。M&Aのアドバイザーとしては、最低限会社の財務数値が読めて簡単な分析ができ、また、会計の専門家とのコミュニケーションができるレベルさえあればよいでしょう。
僕の会計の知識は上記を満たしていました。そのため、面接では実務経験なくても評価されたし、入社後も役に立ちました。
東南アジアでの勤務経験
これは、僕が入社した会社特有ですが、東南アジアの案件を多く取り扱っていました。僕は4年弱、シンガポールを拠点に東南アジア各国を飛び回っていたので、東南アジアのことを他の人よりは知っていました。
東南アジア案件を扱う際は、買い手となる日本企業から東南アジアについて聞かれますので、だいたいのことは説得力をもって回答できました。客観的な数値以外にも、肌感覚についても回答できたのは、仕事上大きなプラスだったと思います。
こういった点を見越して、面接では僕の東南アジアでの勤務経験を評価されました。そして、入社後もプラスとなりました。
アメリカMBA留学での経験、スキル
続いて、僕のアメリカMBA留学での経験、スキルでM&Aアドバイザーとして評価されたものを挙げます。
ファイナンスの知識
MBAのファイナンスの授業はファイナンスの専門家としてやっていくには足りないですが、M&Aのアドバイザーとして必要な知識は得ることができます。例えば、バリュエーション。その中でも、DCFと呼ばれる手法はM&Aの実務では多く出てきます。MBAのファイナンスの授業では、たくさんDCFでのバリュエーションを行いました。
僕はMBAのファイナンスの授業が好きで、成績も良かったです。そのことを面接ではアピールしました。もちろん、評価されていたと思います。また、入社後も非常に役に立ちました。
ビジネス分析
最後にMBAで学んだビジネス分析の経験です。MBAでは様々なフレームワークを使ってビジネス分析を行います。例えば、SWOT分析や5フォース分析があります。戦略の授業を中心に、何度もこういったフレームワークを用いてビジネス分析を行いました。
M&Aの現場では、売り手企業を分析するのに、こういったフレームワークを用いたビジネス分析が非常に役に立ちました。具体的には、売り手企業をどういった買い手が評価するか、どこがアピールポイントか把握するのにフレームワークを使ったビジネス分析を行いました。
面接時点ではまだM&Aアドバイザーの仕事に対してあまり深く理解していなかったので、明確にアピールしませんでした。しかしながら、会社側はアメリカMBA留学でこのような経験があること推察して、評価してくれていたと思います。ただ、ビジネス分析の経験を面接でもう少しアピールできれば良かったかなと思います。
入社後については、ビジネス分析をする場面で自然とフレームワークを使って情報を整理することができました。売り手企業を理解するのは誰よりも早かったと思います。
最後に
1年制アメリカMBA留学でもキャリアチェンジは可能かのテーマで書きましたが、結論はアメリカMBA留学前の経験にプラスすれば、キャリアチェンジは可能です。実際に僕は、アメリカMBA留学前の経験と、アメリカMBA留学での経験を共にアピールをし、営業からM&Aのアドバイザーへとキャリアチェンジをしました。
アメリカMBA留学での経験は1年でもとても貴重なものです。しかしながら、これだけでは十分ではありません。これから、1年制アメリカMBA留学を目指している方は、留学前の職務経験を充実させ、できるだけ結果を残してください。そして、素晴らしいキャリアを歩んでください。
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