アメリカMBAのケーススタディのデメリット

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アメリカMBAの醍醐味はケーススタディとディスカッションだと思います。僕も多くのケーススタディを行ってきました。しかし同時にケーススタディが本当に効率的な方法か違和感を持っています。巷にはケーススタディ礼賛の意見が多いと思いますが、今回は批判的な立場からケーススタディを考察してみようと思います。

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アメリカMBAのケーススタディとは?

ケーススタディは「ビジネス上の決断を迫られるケース(ストーリー)を各自で読み、自分の考えを構築し授業でディスカッションする」というものです。ケースは実話もあれば誰かが作ったフィクションもあります。ケース中に選択肢は与えられている場合もありますが、答えはわかりません。いろんな前提や選択肢を考慮し、自分で答えを考えるのです。

一般的にケーススタディは実践的で考えるプロセスに焦点が当てられるため、効率的に学べると言われています。ただそれに関して僕の考えを書いていきたいと思います。

MBAケーススタディのデメリット1: 理想論に終始する

僕はケーススタディは実践的だと思えません。それはケースから導かれることやディスカッションで話す内容が机上の空論で終始してしまうことが多いからです。

例えばリーダーシップ関係のケースでは人間の心理や感情といった非合理的な部分がディスカッションから抜け落ち、合理的な部分に重点を置いた理想論に終始してしまいます。もちろん教授が気づいてうまくディスカッションの方向を修正できると思いますが、僕の教授はそんな気配ありませんでした。

他にもマーケティング関係のケースでは目標達成に重きを置き、コストを考えない議論が進んでいきます。そういった意見を聞きながらも「それができるなら最初からやってるよ」と心の中で思っています。そして現実的な考えを提示すると効果が限られているといった理由で劣った意見として取り扱いされます。

どうでしょうか。それでもケーススタディが実践的だと思いますでしょうか?

MBAケーススタディのデメリット2: 時間がかかる

僕はケーススタディの効率は非常に悪い気がします。まず授業前にケースを読みますが時間がかかります。分量は多い時でA4紙15枚程度、少ないければ5枚程度です。ケースの中には背景や前提をより正確に書くため不必要な情報もたくさん含まれており冗長に感じます。ケースは状況描写がメインなので本や教科書と違ってそれ自体が勉強になるものではないです。ケースを読んだらそこから重要な情報を抽出し、自分の考えを構築します。僕は授業前の準備に1時間半から2時間かけています。

そして授業中に30分くらいかけてそのケースについて話し合います。60人いるクラスなので発言機会は1ケースにつき1回あるかないかです。あとは他の人の考えを聞くことになるのですが本当に有益な発言は全体の2割程度。残りの8割はParticipation Pointを獲得するためにとりあえず手を挙げて発言したといったレベル。Participation Pointは単に出席するだけでなく、授業への貢献度が測られます。学校のレベルによって授業中のディスカッションレベルは変わってくると思いますが、どのMBAプログラムでもParticipation Point目当ての発言が一定数あることは予想できます。余談ですが僕らのMBAのParticipation Pointは全体の成績の15%程度ですが、ハーバードは噂ではだいたい50%とのことです。日本人留学生はかなりキツイと想像できます。

ディスカッション後に教授がケースから学べることをまとめるのですが、ディスカッションした方向とは違う場合があります。それならディスカッションなしでいいんじゃないでしょうか。そもそもケースという長い文章を読ませて生徒間でディスカッションするよりも、講義の中で各々のポイントで生徒に意見を求めながら授業を進めた方がいいのではないでしょうか。その方が少ない時間で同じことを学べるのではないでしょうか。

ケーススタディよりも講義の方が、短時間で高レベルなことを学べるような気がしてしょうがないです。

 MBAケーススタディのデメリット3: 自分の考えの良し悪しがわからない

ケースにはその後どうなったのかが書かれていないので、自分の構築した考えが良かったのか悪かったのかがわかりません。それを確認するのが授業中のディスカッションだと思いますが、議論が自分の考えとは違う方向に進んだ場合、流れを止めてまで自分が用意していた発言することはできません。

答えが確認できないと雲をつかむような感じになり、考えるモチベーションもどんどん減っていきます。実話ではない場合、興味がわかず当事者として考えることも難しくなります。ケーススタディよりも実際の企業の成功例、失敗例を分析した方が興味も大きいし効率がいいような気がしてなりません。

MBAケーススタディのデメリット4:ネット上にはケースの解法が蔓延している

今の若者はわからないことは全てネットで探す時代です。そしてこのケースに関してもケースのポイントをまとめたサイトや他大学の学生が作ったスライドをネット上で見つけることができます。あからさまに言う人はいませんが、クラスの一定数の人はケースを読まず(もしくは軽く目を通して)ネット上の解法を見て授業に臨んでいます。

それって本当に意味のあることなのでしょうか?ネット上の情報を消すことは不可能ですし、人間は本能的に誘惑に弱い生き物です。ますますケーススタディの有効性が薄まってきているような気がします。

MBAケーススタディのデメリット5:意外に高い

ケースは購入しなければなりません。1ケース400円から500円します。塵も積もれば山となり、授業によっては5,000円以上かかることも。しかもケースは電子版でしか手に入りません。そして著作権の関係からシェアできず、全員購入しなければなりません。よって教科書代より高くつくことも。状況描写だけのケースが、体系的に多くの知識がまとめらている教科書より高くつくなんて受け入れられません。ケースの大部分はハーバードビジネススクールで購入しますが、彼らはとてもいいビジネスしていると思います。

最後に

もちろんケーススタディにもいいところはあります。そこは僕も異論はありません。ただ、昔ながらの講義形式の授業の方が優れているような気がしてなりません。今後一定期間はMBAでケーススタディは使われ続けると思いますが、将来的に見直されるような気がします。

 

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