一般的に日本人は直接言いたいことを伝えず、間接的に伝えたいことを伝えると言われています。僕もそれには同意します。ただ今までの経験から、それは日本人特有のコミュニケーション方法ではなく、世界中でみられるものだと思います。東南アジアにいた時は日本人以上に間接的な表現をする様に心がけていました。そして、留学中もアメリカ人のコミュニケーション方法を観察すると、かなり間接的に伝えてるなという場面がありました。
アメリカ人はとにかくまず褒める!
アメリカ人は褒めることが得意です。どんな出来でもまず褒めます。例えば、授業中にプレゼンすると「Great work!」と言ってくれます。それを真に受け止めてはダメです。その後に、良くなかった点のフィードバックが続きます。良くなかった点もかなり柔らかく伝えます。「Opportunities/Areas for improvement are 〜」「It could be better/clearer if 〜」「I would like to see 〜」などなど。
最初の方は慣れずに、こういうことがありました。プレゼンをして、その場のフィードバックもnice work, great workなど賛辞の言葉が並んでいました。渡米後間もないピュアな僕は、プレゼンの成績を楽しみに待ちました。ところが後日つけられた成績は80点しかありませんでした。Aを目指すには90点以上。かなりのビハインドです。少しショックを受けたことを覚えています。
ちなみに、誰かのプレゼン後に質問する際やフィードバックをする際も、最初に褒めてから、ここのところがわからなかったから教えて欲しい。という風にするとプロフェッショナルに映るでしょう。
アメリカ人も枕詞を使う!
英語にもたくさん枕詞、クッション詞があります。日本人がよく知っている、「I am afraid」や「I am wondering」以外にもたくさん表現があります。観察してると、アメリカ人はそれらを上手く使って、角が立たない様に円滑なコミュニケーションを取っていました。例をご紹介します。
- グループワークの時の話です。5人のうち1人時間通り来ませんでした。時間を無駄にする訳にはいかないので、1人欠けた状態でグループワークを進めていました。30分後、方向性が決まった後にその人はやって来ました。その人が既に決まった方向性について、こっちの方がいいんじゃないかと意見を言い始めました。「遅れてきてなんだこいつ」といったピリピリした雰囲気が漂い始めました。そこでグループの1人が発した言葉が「Don’t get me wrong but we’ve already decided」。
この「Don’t get me wrong」はとても便利で、伝えにくいことや誤解を招きやすいことを伝える前に使うことができますし、伝えてしまった後に使うこともできます。
- グループワークで作成した宿題に関して、教授との打ち合わせ。我々の提出したものに対して、辛辣なフィードバックが来ました。内容を要約すると「論拠が弱過ぎ。適当にやって提出したんじゃないか」というものです。実際は5時間近くかけて作成したものです。確かに出戻りがあって、かなり時間を無駄にしたこともあり、完成したものは胸を張れるレベルではありませんでした。論拠が弱過ぎるのは認めますが、適当にやって提出したの部分は否定しなければなりません。そこでグループの1人が発した言葉が「With all due respect, we put fair amount of effort in this assignment」。
「With all due respect」は主に目上の人に反対意見を述べる時に使います。
他にもたくさん枕詞を聞く機会がありました。ここで伝えたいことは必ずしも「アメリカ人=思ったことを率直に述べる」ではないということです。アメリカ人もお互い尊重しながら、気持ち良く過ごせる様にコミュニケーション方法を工夫して過ごしています。
アメリカ人の「That’s a good question」を真に受けるな!
質問にした時によく「That’s a good question」と返答が来ることがあります。もちろん、あなたが良い質問をしたのでこの返答が来た可能性もあります。しかし、ほとんどの場合、別の理由で「That’s a good question」をアメリカ人は使っています。なので良い質問をしたと喜ばないようにしましょう。
1、想定外の質問が来たので、時間稼ぎをしてる
この可能性が一番多いと思います。回答するのに少し考えなければいけない質問の際は「That’s a good question」と言って時間稼ぎをしています。それでも回答できない時は、「That’s a good question. I don’t know」と続くことがあります。
この場合は、本質を付いてる可能性や回答者の質問想定のモレがあった可能性があるため、特に問題はないですが、次の場合は気をつけましょう。
2、本質から外れた、しょーもない質問が来た時
人間なのでたまに本質から外れた、しょーもない質問をしてしまうことがあります。「That’s a silly question」とか「Not important」なんて言えないですよね。それらの代わりに「That’s a good question」を使う場合があります。
アメリカ人の友人曰く、その場合は声のトーンや回答者の微妙な表情の変化でわかるそうです。僕はわかりませんでした。
ただ、アメリカ人はそんなこと気にせずわからないことは積極的に質問しています。大切なのは「That’s a good question」と言われても、本質を突いた良い質問をしたと思って喜ばないことです。
最後に
他にもたくさんアメリカ人の間接的なコミュニケーションを見てきました。
僕は元来、思ったことをかなりストレートに伝えるタイプです。若い頃はアメリカでは当たり前だし、それが自分の良さと勘違いしていました。そして、多くの人の反感を買ってきました。歳を重ねて少しずつ丸くはなってきましたが、たまに悪い癖が出てしまいます。
MBAの授業の一つに「社内政治の重要性」がテーマのものがありました。大切なのは仕事を推進すること。協力者を作るのであって、敵を作ることではないのです。なんでもストレートに伝える文化だと思っていたアメリカで、間接的なコミュニケーションの大切さを学ぶなんて、何か皮肉の様な気がします。
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